大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)885号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人及弁護人緒方鉄次の上告趣意について。

株式会社の代表取締役は、その任期満了前においては、当然に会社を代表して告訴することができること勿論であるが、たとい、その任期が満了した場合においても、新たに会社を代表する取締役の選任就職するまでは、なお右会社を代表して告訴することができるものである。従って仮りに所論の如く本件告訴がなされた当時右会社の代表取締役山下金平の任期が満了していたとしても新たに会社を代表する取締役が選任されていないこと、本件記録添附の登記簿謄本、証人山下金平の第一審及原審における証言等に徴し明瞭であるから、右山下金平において会社を代表してなした本件告訴は、有効のものである。従ってその任期が満了しているから本件告訴が無効のものであるという主張は採用できない。

また、告訴状に記載されている肩書番地は代表取締役山下金平の住所であることは同人の第一審公判廷における証言によって認められる。

且つ、同会社が所論の如く、会社の資本金の一部が未払込であり、長期間株主総会が開催されなかった等の事実があったからといって、本件告訴のあった当時、同会社が架空の会社であったということはできない。(現に被告人を民事の被告として損害賠償請求の訴を提起している)被害者がその後に当該被害物件等を他に売却したからといって被害者として告訴をなし得ないものではない。

結局、所論はいずれも、本件告訴の無効を主張するものであって、上告適法の理由とならない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものと認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 本村善太郎 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例